サフランボルはトルコ中北部の標高600mの山間部に位置する小さな町です。黒海沿岸と内陸部をつなぐ場所にあるため、シルクロード時代には交易の中継地点として繁栄しました。
サフランボルの名前の由来は、町にサフランの群生があったためと言われています。現在は昔ほどサフランの花は咲いていませんが、サフランの産地です。ちなみにサフランは赤い花ですが、色素は金色で、古代から香料や染料として使用されてきました。
サフランボルの旧市街地は「チャルシュ」と呼ばれており、オスマン帝国時代からの古い木造建築家屋が建ち並んでいます。サフランボルの古民家は独特の造りをしており、2階部分が1階部分よりかなりせり出しています。主に倉庫や物置としてしようされた1階部分は切石積み造り、住居として使用された2階以上部分は木造造りとなっています。家の内部は、ホールのような空間を中心に、小部屋が周りに配置されています。これは昔大家族で生活していたので個々の夫婦に心室が必要だったためです。各夫婦のプライバシーを守るため、部屋の押し入れの扉を開けると簡易式風呂があったり、部屋の入口に目隠し用の木製ついたてがあるなどの工夫が施されていました。また、昔はイスラム教の影響が強かったため、来客時には家の上階が女性専用スペース、下階が男性専用スペースと区別して使用されました。女性が親族以外の男性と顔を合わせないようにするための配慮です。
旧市街は30分ほどで歩いて回れる位のこじんまりした区域です。ほとんどの路地が石畳で覆われており、その上に張り出したブドウ棚が真夏でも涼しい日陰をつくっています。路地の両脇には昔ながらの職人の店が軒を連ねています。刺しゅう品店、香辛料店、鍛冶屋、パン屋など、どれも素朴な味わいのある店ばかりです。サフランボルはロクム(ギュウヒに似た菓子)の産地としても有名であり、これをはじめとするトルコ独特の甘いデザート菓子を扱う店もかなりあります。
路地を歩いていると、ふと一昔前の時間が流れているような気分になります。この特徴ある伝統的建築様式と穏やかな生活文化により、「トルコで最も美しい街」と呼ばれる旧市街地域は1994年にユネスコの世界遺産にも登録されました。木材が多用されている建築物が多いせいか、日本人にはどこか懐かしく、心落ち着ける街とも言えます。石やコンクリート製の建築物が多いトルコの中で、サフランボルを訪れるとまるで故郷に帰ったような気分にさえなります。中世の雰囲気を醸し出す街の様子と穏やかな人々の温かい笑顔に旅の疲れも癒されることでしょう。 |